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理想の靴べらを求めて [モノ]

靴はいまや趣味の一ジャンルとして確立された感があり、マニアのブログや掲示板での議論もかなりの分量にのぼります。手入れも活動範囲の一部として、クリームや磨き方についてもいろんなコメントが見られます。ところがどういうわけか靴べらについての意見を見かけることはほとんどありません。手元の靴関連の本を紐解いてもほとんどは「履くときには靴を痛めないように靴べらを使いましょう」という記述がある程度で、唯一『Handmade Shoes for Men』が靴べらについて独立した項目をほんの一ページ割いているのみです。

僕はこれまで5~6年前に渋谷の東急ハンズで買ったアビーホーンワークス製の牛の角でできた小さな靴べらを使って特に不満はなかったのですが、最近もう少し大きなサイズのものが欲しくなりました。というのも昨年買ったチャッカブーツを履く時に、これがアンラインドなため踵周りがフニャフニャ安定しないので、靴べらを中底まで差し込んで履きたいのですが、手持ちのだとブーツには短すぎる問題があったからです。

英語で"shoe horn"というように靴べらは角で作られていることが定義に則っているだけでなく、固さと滑りの良さが最適なので次も牛の角のものを探そう。ただこの滑りの良さはクセモノで、足入れには良いのですが持つのに滑っては困るので、握りやすい取手が付いたものが欲しい。

ネットでアビーホーンワークスのものを中心に牛の角の靴べらを探してみると、取手付きはほぼ無く、ごくわずかにあっても長すぎるものばかり。3~40センチある靴べらは立ちながら使うことを想定しているので、座敷のある居酒屋や訪問先でならいいのですが、家の玄関で履く場合下駄箱から靴を出したりシューツリーを抜くために一旦屈むので、その後また立ち上がって履いて再度屈んで靴紐を結ぶという不必要なアクションがいることになります。

僕の求める靴べらは果たしてどこにあるのか・・・。
ロンドンで売ってそうな店を探すことにしました。

候補はまずはやはり靴屋。世界第一級の靴屋が軒を並べるロンドンでは靴べらもそこそこ見つかります。

チャーチとニュー&リングウッドでは本体が金属で取手が革の、小さな折りたたみのものがありました。これは携帯用で、欲しいサイズではありません。

クロケット&ジョーンズ、フォスター&サン、ジョージ・クレバリーではアビーホーンワークスのものがいろんなサイズでありましたが、取手付きはありません。クロケットには、切り込みの入ったドアストッパーみたいな専用台が付いた長い木製のものも置いてありました。

ところで1月はどこもセールやってますが、ジョージ・クレバリーでビスポークサンプルの素晴らしい靴が安く売り出されてたりして非常に面白かったです。店員に話を聞いてるうちに、一足だけ僕のサイズのがあった、既製靴最強のオーラを放つアンソニー・クレバリーラインの逸品を倉庫から持ってきて半額だというので興奮してしまい、気づいたら靴箱とクレジットカードの明細が入った袋を持って立ってました。靴べらを見に来たはずのになんてオソロシイ!

閑話休題。
ジョンロブ(ロンドン)、ジョンロブ(パリ)、エドワード・グリーン、トリッカーズ、ロークでは靴べらは置いてなかったです。

靴屋の他にはグルーミング系の店も見てみることにしました。
髭剃りやブラシや石鹸など売ってるテイラー・オブ・オールドボンドストリートの入り口付近にいつも靴べらがぶら下がってた印象が残ってたからです。店に行ってみると今回の探索で最もたくさんの種類が置いてあり、サイズも理想的で取手付きのがズバリありました。が、しかし高い。メチャ高くて怯んでしまいました。

他も見てみよう。

トゥルーフィット&ヒル、DRハリスにはアビーのものがいくつかありましたが、取手付きは置いてません。ジオ・F・トランパーには長いのばかりで取手部分に犬とか指を曲げた手のひらの意匠を凝らしたものが置いてあり、手のひらのは孫の手みたいだと思っていたら、店員が「それ"back scratcher"だよ」と。ホントに孫の手でした。イギリスにもあるのか。家の中で靴を脱ぐ日本人からすると、背中がかゆい時に玄関まで孫の手を取りに行くのは変だよなぁ。

そしてマードック。ここで取手付きでサイズも欲しいのがあり、値段もテイラー・オブ・オールドボンドストリートとは比べ物にならない安さだったのでようやく購入に至りました。マードックのロゴが刻印されたアビーへの別注品で、本体は牛の角、取手は鹿の角。所有満足感は高いです。

やっと気に入るのが見つかりました。
これでもう靴べらについて考えなくていいや。

実に13件もの店を周ったのでさぞロンドン中を縦横無尽に駆け巡ったのかと思いきや、これらの店全てが半径たった200メートルの円の中に収まってます。こんなテーマで趣のある店を次々とはしごするのは、やっぱりロンドンで買い物する醍醐味だとあらためて思うのでした。
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